民事信託と商事信託の違いを徹底解説!どちらを選択する?

世の中には民事信託と商事信託というものがあります。皆さんが家族信託と説明されているものが民事信託のことで、信託銀行が扱っているものが商事信託になります。

両者の内容や違いについて説明をさせていただき、どちらを選択するのか書かせていただきます。

 

民事信託と商事信託の概要

まずは民事信託と商事信託の概要を簡単に解説します。

民事信託とは

一言で説明させていただくと、家族の財産管理、財産承継のために利用される信託をいいます。

民事信託については既に説明をさせていただいておりますので、下記記事をご参照下さい。

参考記事:民事信託とは?仕組みを徹底解説!

商事信託とは

商事信託とは、金融庁の許可を受けている業者が受託者として信託を行う場合をいいます。

業者としては、信託銀行や信託会社があります。

 

民事信託と商事信託の違い

続いて今回のメインテーマである、民事信託と商事信託の違いについて解説します。

①受託者の権限

民事信託と商事信託は受託者の権限が違います。

商事信託においては、信託銀行等の設定したモデル契約に沿っており、受託者の権限は画一的なものになります。

基本的には、金融資産についての管理をする権限を有するだけです。

これに対し、民事信託においては、契約自由の原則が妥当しますので、委託者と受託者の意向を踏まえて権限の範囲を柔軟に定めることができます。

②財産管理の範囲

民事信託と商事信託は財産管理の範囲も違います。

商事信託においては、金銭に限定されることが多いです。不動産についても多くの場合財産管理の範囲外とされる場合が多いです。

民事信託については、金銭だけではなく、不動産、株式、仮想通貨等幅広く財産管理の対象とすることができます。

③信託にかかる報酬

民事信託と商事信託は信託にかかる報酬も違います。

民事信託については、報酬が発生するかどうかは契約によります(通常は報酬なしとされる場合が多い)。

これに対し、商事信託については、仕事として受託者の業務を行っているわけですから、報酬が絶対に必要になります。

報酬としては、契約書作時の費用、管理費用等が必要になってきます。

 

民事信託と商事信託のそれぞれのメリット・デメリットを比較

民事信託と商事信託それぞれのメリットデメリットは下記の表の通りです。

メリット デメリット
民事信託
  • 信託できる財産が多い
  • 余計なコストがかからない
  • そのように信託するかを自由に設計できる
  • 事例が少なく、個人で信託の契約を進めるのが難しい
商事信託
  • 煩雑な資産管理の負担が軽減できる
  • 受託者がいない場合にも設定できる
  • 信託できる財産がほぼ金銭に限られる
  • 費用が高額になる
  • 信託の契約内容を委託者の要望に応じて変更できない


それぞれのメリットデメリットについて簡単に解説します。

民事信託のメリット

民事信託のメリットは下記の3点です。

①信託できる財産の種類が多い

前述しましたように信託できる財産は、金銭だけでなく、不動産、株式等多岐にわたる財産を信託することができます。

②余計なコストがかからない

商事信託と異なり、報酬が原則として不要となりますので余計なコストがかかりません。

③どのように信託するかを自由に設計できる

民法上の大原則である契約自由の原則により当事者の希望に応じて柔軟に契約内容を策定することができます。

民事信託の存在意義がオーダーメードの信託を実現できる所以になります。

商事信託のメリット

商事信託のメリットは以下の2点です。

①煩雑な資産管理の負担が軽減できます

商事信託の場合、信託銀行等プロが受託者になりますので、適切な財産管理が期待できます。

適切に財産管理が可能になるため、煩雑な財産管理の負担を軽減することができます。

②受託者がいない場合にも設定できる

民事信託契約において一番難しい問題は、受託者を誰にするかということです。

弁護士等士業は仕事として受託者になることができず、親族等から受託者を見つけることができない場合、民事信託を設定することができなくなります。

商事信託の場合、信託銀行等が受託者になりますので、受託者がいない場合にも設定できるというメリットがあります。

 

民事信託のデメリット

民事信託のデメリットは事例が少なく個人で信託の契約を進めるのは難しいという点です。

民事信託については発展途上の領域であり、どのような内容の信託を設定するか不明確な部分があります。

そのため、契約作成後に思わぬ問題が生じることがあります。最近でも終了時期を巡る問題等が生じています。

商事信託のデメリット

商事信託のメリットは以下の3点です。

①信託できる財産が、ほぼ金銭に限られている

前述したように、商事信託においては信託財産は金銭に限定されています。
信託を設定するにあたり一番ニーズの高いものは不動産の信託であり、委託者のニーズに沿えないデメリットがあります。

②費用が高額になる

商事信託についての費用は通常100万円を超える初期費用+管理費用が必要になるので、高額の費用が必要になってきます。

③信託の契約内容を委託者の要望に応じて変更できない

商事信託においては、契約内容は定型化されている場合が多く、委託者の意思に従って柔軟に設定することができないようになっています。

 

民事信託と商事信託どちらを選ぶべき?

最後に民事信託と商事信託どちらを選ぶべきかについて解説します。

両者のどちらを選ぶべきか。非常に難しい問いではありますが、それぞれにメリット・デメリットがあり、利用する目的に応じて使い分けましょう。

民事信託を選ぶべきケース

一般的に契約内容を柔軟に設定でき、しかもコストも抑えることができる民事信託を選ぶべきかと思います。

特に相続する相手を自由に決めたい・事業承継を行いたい場合は民事信託を選ぶと良いでしょう。

民事信託契約の設定は非常に難解なものですので、弁護士等士業のサポートは不可欠になりますので、契約書作成、その後のサポートを依頼した方が良いでしょう。

商事信託を選ぶべきケース

適切な受託者を見つけるのが難しい場合や、長期の信託になる可能性がある場合は商事信託を選ぶと良いでしょう。

まとめ

民事信託と商事信託、似て非なる部分もあります。ご自身にとってどのような意図で信託を設定するかによって選択する制度も変わってきますので、よく考えて活用してください。

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