民事信託を組成するにあたっては誰を受託者にするのかということは悩ましい部分があります。
今回は受託者を法人とすることについて概説をさせていただきます。
目次
民事信託の受託者を法人にするメリット
まずは民事信託の受託者を法人にするメリットをご紹介します。
①受託者が死亡するリスクがない
民事信託において、受託者が個人(自然人)の場合、信託契約期間中に受託者の方が先に亡くなってしまうことも当然あり得ます。
もし受託者が亡くなってしまった場合は、受託者変更登記手続が必要になります。
当然のことですが、法人には「死亡」の概念がないため、登記や口座の名義変更といったことを心配する必要がなくなります。
②受託者の高齢化リスクがない
①で解説した受託者が亡くなってしまった場合と同様に、受託者が高齢になり、認知症や判断能力が充分でなくなることもあり得ます。
もし、認知症や判断能力が充分でなくなってしまった場合は、受託者自信が信託財産を管理・処分することができなくなってしまいます。
法人にすればこのようなリスクを負うことはありません。
③受託者の変更手続を簡略化することができる
受託者が変更されると信託財産の名義を旧受託者から新受託者へ変更する必要が生じます。
変更のための手続が受託者の変更が生じるたびに行う必要が生じますが、受託者が法人の場合、これらの手続きの手間を軽減することができるのです。
民事信託の受託者を法人にする場合に適している法人の種類とは
法人には「株式会社」「有限会社」「一般社団法人」「一般財団法人」などの種類があります。
民事信託の受託者とする場合にはどの種類の法人が適任なのか難しいところがあります。
民事信託の受託者として検討されるのは、主に営利法人である株式会社か、非営利法人である一般社団法人になります。
以下、各々の場合について説明をさせていただきます。
株式会社にする場合
株式会社は、営利法人であるため、民事信託者の受託者とする場合は注意が必要です。
信託業務を引き受ける場合は対価として信託報酬を受け取ることになりますが、業務として信託報酬を受領することは信託銀行等以外認められておらず、信託業法への抵触の可能性があります。
そこで、信託報酬を受け取らないという選択肢も可能ですが、株式会社は営利法人なので、無報酬は不自然と考えられます。
一般社団法人にする場合
先ほどご説明した通り、営利法人である株式会社を受託者とする場合には、信託業法の抵触に気をつける必要があるため、実務上では受託者を一般社団法人とするケースが多いです。
一般社団法人の設立には、社員(社団の構成員)が2人以上必要となってきます。
なお、定款の作成にあたっては、信託業法に配慮して、「財産管理を目的とした民事信託の引受」といった記載をすることが求められます。
民事信託の受託者を法人にする場合の注意点
結局、法人にする場合、法人として適切な運営が必要になります。具体的には税務申告、総会の開催等の手続を要します。
また、前述したように信託業法に抵触しないようにすることも大切です。
まとめ
ある程度大きな金額を受託するような場合、法人を受託者とすることも十分に考えられますね。詳細は専門家にご相談ください。