税金の問題もさることながら、民事信託をした場合、形式的に委託者から受託者へ財産の移転が生じることになります。
そのため、所轄の税務署へ何らかの届出が必要なのか、また、確定申告についてはどうなるのかについて解説をさせていただきたいと思います。
目次
税務署への届出が必要になるのはいつ?
民事信託を組成する場合、所轄の税務署への届出が必要な場合と不要な場合があります。
以下、概説をさせていただきます。
民事信託を設定したときに届出が必要になる
信託契約締結等の信託の設定をした場合、受託者は、翌月末日までに、信託財産の種類・所在場所・価額等を記載した調書及び合計表を税務署に提出しなければなりません(相続税法59条3項)。
他方で、届出が不要になるケースも記載もあります。
多くの事例で利用される自益信託の場合(自益信託:委託者=受益者となるようなケース)、他益信託の場合と異なり、実質的に財産の移動が生じませんので、届出の必要はありません。
また、受益者それぞれの受益権の相続税評価額が50万円以下の場合も必要ありません(相続税法59条3項但書)。
毎年1月31日までに届け出ることが必要になる
受託者は、毎年1月31日までに、前年の信託財産の状況等を記載した信託の計算書及びその合計表を税務署に提出しなければなりません。
他方で、届け出が不要になるケースもあります。
1年間の信託財産に係る収益(例えば、不動産信託であれば、アパート収入等)の合計額が3万円以下(計算期間が1年未満の場合には1万5千円以下)の場合、届け出る必要はありません(所得税法227条)。
民事信託の内容を変更した場合
受託者は、民事信託の内容の変更があった場合、その変更があった月の翌月末日までに、信託財産の種類・所在場所・価額等を記載した調書及び合計表を税務署に提出しなければなりません。
他方で、届け出が不要になる場合もあります。
受益者それぞれの受益権の相続税評価額が50万円以下の場合については、届け出る必要はありません。
不動産所得がある場合の確定申告時
受益者が個人の場合、信託不動産からの収益があると、受益者は確定申告書に不動産所得に関する書類(収支内訳表等)や信託から生じる不動産所得に係る明細書を確定申告時に添付して提出しなければなりません。
民事信託が終了した場合
信託が終了した時に受託者は、翌月末日までに、信託財産の種類・所在場所・価額等を記載した調書及び合計表を税務署に提出しなければなりません
届け出が不要になるケース
- 残余財産がない場合
- 信託終了直前の受益者が残余財産の給付を受けず、帰属者とならない場合
- 受益者それぞれの受益権の相続税評価額が50万円以下の場合
民事信託の確定申告は誰がする?
受託者に財産の管理を委託していますので、受託者が確定申告をすることになります。
受益者に利益が帰属するような場合、受益者も確定申告をすることが必要になります。
確定申告についてどうすべきか悩ましい場合、専門家に相談されることをお勧めします。